2010年10月25日

現役鍼灸師Kの「思うところを述べよ!?」 vol.203 寒くなると「おしっこ」の量が増える理由と対策


明日、発行予定のメルマガをひと足お先にお届けします。



随分と朝晩の気温が下がって、寒さを感じるようになってきました。暦の上では霜降(そうこう)の時期にあたりますから寒くなるのは当たり前と言えば当たり前なのですが、やはり寒いのは苦手という方も少なくないですね。

そして、寒くなると、夜にトイレに立つことが増えて困るというお話もよく効きます。
なので、今回は寒くなると日中でもトイレに行くことは増えるのですが、そのメカニズムのご紹介と対策法を提案したいと思います。

それでは、まず排尿の役割について少々、説明をします。

排尿の役割としては
1.体液量の調節
 身体内の水分量の調整です。

2.体内の浸透圧の調整
3.体液の酸塩基平衡の調節
 通常は賛成に傾いています。

4.不容物質の除去
 尿酸や尿素などは有害となるので、体外へ出した方がよいですし、有用なものであっても過剰になっているものは排泄されます。

というようなことを主に行なっています。

そして、その尿を作る臓器が腎臓ということになります。

では、次に腎臓ではどのようにして尿が作られているのかを説明します。細かく言うと難しくなってしまうので、簡便に説明します。

尿を作る部分は腎単位=ネフロンと言います。このネフロンはひとつの腎臓に百万個ぐらいあると言われています。

そして、ネフロンは糸球体+ボーマン嚢+尿細管で構成されています。

糸球体は毛細血管をグルグルっと丸めたような構造で腎臓に入ってきた血液から大きな細胞成分などをろ過します。ボーマン嚢は糸球体でこし取られた原尿を受け止め、尿細管へと送ります。尿細管では身体に必要なもの、ブドウ糖や水分、ナトリウムなどを再吸収しています。

ここまで通過した体液を尿と呼びます。さらに尿となった液体は
腎杯→腎盂→尿管→膀胱→尿道へと進み、体外へ排出されるということになります。

腎臓では身体に必要なものと不必要なものを分別して、必要なものは再度、体内へと吸収するということを上記のような流れで行なっていますが、その大元の液体はいろんな成分を含んだ血液として腎臓へ送り込まれるということになります。

腎臓には肝臓などと同様に重要な働きがありますから、一定量の血液が流れ込むようになっています。一分間に心臓が送り出す血液量の約25%が流れ込むことになっていて、両方の腎臓で1分間に1.25リットルの血液が流れる計算になります。

腎臓に流れ込む血液量は基本的に上記のようになるのですが、冬場などは寒さから身体を守るためや、体温を保持するために体表に近い部分には血液をあまり流さないようになったりするので、血圧が多少上昇することになります。

となると腎臓に流れ込む血液量も増量されて、尿の量も増加することがあります。これが寒くなると尿量が増加するひとつの原因になります。

それで、尿量が増加すると言っても、日中ならあまり問題はないのですが、夜、睡眠中にトイレに行きたくなって眼が覚めるということが増えてくると、睡眠の質にも影響しますので、身体に大きな負担になります。

通常、尿意は膀胱に300mlから400mlほど尿が溜まると催してくると言われていますが、最近はそれほど尿が溜まっていないのに尿意を催すという方も少なくありません。
膀胱は自律神経の交感神経の働きで尿を溜めるように働きます。そして尿意を感じたら排尿中枢(腰仙髄と脳幹の橋にある)に刺激が伝わり、排尿反射が起こり、今度は副交感神経が働いて、排尿筋が収縮、内尿道括約筋が弛緩して排尿が起こります。

なので、病気では脳疾患や脊髄損傷などでも排尿に影響が出たり、その他には女性では子宮筋腫などの婦人科疾患、男性では前立腺肥大などでも関係する神経を刺激してしまい、排尿に影響が出ることがあります。

その他に、排尿には自律神経の働きが関与しているので、ストレスなどによって自律神経のバランスを崩すことで排尿に影響が出ることもあります。

ここまで書いた原因は日中でも起こる影響ですが、特に睡眠中ということになると、

1、水分の過剰摂取
2.身体の冷え
3.抗利尿ホルモンの分泌不足

なども考えられます。就寝中も腎臓は働いているのですが、通常は睡眠中にトイレには行かないで済むようになっています。

就寝中は抗利尿ホルモンの分泌が増加し、尿の産生量を減らしていますし、膀胱も尿をたくさん溜められるように働いています。

とはいえ、水分摂取が過剰だったり、特に緑茶やアルコール、コーヒーなどは利尿作用が強いので、就寝前に飲んでいると尿量が増加してしまいます。

そして、身体の冷えですが、特に下半身、から腰回りが冷えると膀胱の副交感神経が優位になり、排尿を起こしやすくなります。これは上記の飲み物にも関連してきますが、冷たいものもそうですが、お茶やアルコールはその性質としても冷やすように働きますから影響が大きいと言えます。

次に抗利尿ホルモンの分泌低下ですが、他の病気の影響で起こる場合もありますし、脳下垂体付近で腫瘍ができることなどによってもホルモン分泌に影響があります。現代医学的にはさまざまな病気などの関連も疑われることになりますが、東洋医学では全体のバランスや診診の疲労などによってもホルモンバランスを崩してしまうとも考えることができます。

次に対策ですが、脳疾患や脊髄損傷、子宮筋腫などの婦人科疾患、前立腺肥大や抗利尿ホルモンに影響を与えるような疾患がある場合はそちらの治療を優先することが必要です。

特に特定の疾患が影響していない場合は、まずは水分摂取の仕方に気をつけてみて下さい。

就寝前の過剰の水分摂取は控える。アルコールなどは就寝前の2、3時間前にはやめておく。夕食も就寝前になると消化管に負担がかかりますし、不消化の食べ物が身体のバランスを崩す原因にもなりますので、就寝前は最低でも3時間程度前には夕食を済ますようにしましょう。

そして、冷えに対しては腹巻、ズボン下、靴下などをうまく利用します。それでも寒さを感じる季節では湯たんぽなども有効です。ただし、重ね履きする場合は締め付けすぎないものを選びます。靴下をはく場合はくるぶしあたりにゴムがくるものを選ぶと足首周囲のツボ刺激にもなりますので、さらに良いと言えます。

それから冷えの対策にもうひとつ加えるとすると入浴をしっかり行なうことです。寒くない程度のぬるめの温度のお湯でなるべくゆっくり身体を温めると後々冷えにくいですし、半身浴を上手にするとリラックス効果もありますから、診診の疲労除去にはお勧めです。

以上で、今回の内容は終わりです。特に夜間の排尿にお困りの方はちょっとためしてみてくださいね。日中にも頻尿がひどいんだということであれば自律神経のバランスを崩しているかもしれませんので、鍼灸、あんま・マッサージなども有効な手段ですので、おすすめしておきます。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
よろしければポチッとお願いします。
FC2ブログランキングへ  人気ブログランキングへ  にほんブログ村 健康ブログ 鍼灸(はり・きゅう)へ


posted by 鍼医Kまたはハリー at 23:58| Comment(4) | TrackBack(0) | メルマガバックナンバー

2010年09月24日

現役鍼灸師Kの「思うところを述べよ!?」 bol.202 チックの治療

明日25日発行のメルマガのコラム部分を一足早く掲載します。



 最近、偶然なのか必然なのか立て続けにチックの患者さんが来院されています。不思議なもので、同じような症状の患者さんが重なることは結構あるんです。

季節要因などはたいていの方には共通に影響するので、体質や生活環境などが似通った方に同じような時期に同じような症状が出ることも十分あり得るという訳です。

さて、チックですけど、まずどういう病体かをみていきましょう。

1.チックの病体
医学辞典を見ると「顔面、頚部、舌、四肢などの筋肉に、不随意な速い収縮が瞬間的に起こり、しかもそれが不規則な間隔で反復する現象である。」となっています。

要は顔や首、手足などに無意識に起こる筋収縮が不規則に繰り返すというものです。

小児に多い、予後が良い単純性チック、慢性で進行性に悪化するジル・ド・ラ・トゥーレット症候群、種々の脳の病変による症候性チックに分類できます。

鍼灸の治療対象となるのは単純性チックと一部、ジル・ド・ラ・トゥーレット症候群でしょうか。

ジル・ド・ラ・トゥーレット症候群の
三徴候として、 1)多系統性チック、 2)声帯チック、 3)汚言症が知られていますが、予後についてもまちまちで個々の状態によって、かなり差があるようです。

チック障害の原因としてはまだよく解明されていないようですが、大脳基底核においてドーパミン系神経の過活動によるものという仮説があるようです。また、遺伝的な要因もあるとされています。

チックは基本的には18歳以下の病気で小学校に通いだす頃に発症することが多いようです。また、女児より男児の有病率が高く、女児より男児の方が発育が遅いことなども要因となっているようです。

また、チックでは強迫性障害、他動血管注意障害(ADHD)や学習障害や自閉症を合併することもあります。

チックは精神的ストレスなど心理的要因で増悪することが多く、患者を取り巻く環境が影響していることも多いようです。

2.チックの治療

 西洋医学では精神科系の薬物治療が中心となるようです。

東洋医学では個々の状態に合わせて治療も変化していきますが、体質などを考慮した全身のアンバランスの解消と運動性チックの場合などは不随意運動をする患部への治療も行なうことがあります。

また、心理的な原因から自律神経のバランスを崩したり何らかの症状が出現している場合はそちらの症状の解消を行ないます。

よく使用する経穴(つぼ)としては頭部の百会、神庭、前兆や大椎、身柱、合谷、内関などがあります。

経絡としては精神的ストレスなど心理的な要因には肝経や心経などの関連が強いですし、発育ということであれば腎経の関与も不快と考えられます。治療穴としては太衝、曲泉、太谿、陰谷などがあります。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
よろしければポチッとお願いします。
FC2ブログランキングへ  人気ブログランキングへ  にほんブログ村 健康ブログ 鍼灸(はり・きゅう)へ

posted by 鍼医Kまたはハリー at 23:32| Comment(2) | TrackBack(0) | メルマガバックナンバー

2010年08月26日

現役鍼灸師Kの「思うところを述べよ!?」 vol.201 意外と多い痔疾患 その2

明朝、発行予定のメルマガですが、こちらには一足先にアップします。


 先月に引き続き、今月も「痔」の話です。
前号では現代医学での痔疾患の捉え方をご説明しました。詳しくはこちら↓をご覧下さい。

http://www.nagomido.net/short/backnumber

今号では痔という疾患を東洋医学ではどのように捕らえ、治療されているかをお話したいと思います。
では、早速はじめましょう。
前号で現代医学では痔は痔核とか裂孔とか痔瘻という風に言うと書きました。東洋医学では文献などをみると痔漏という表現で総称されているように思います。

で、その痔漏については病体としては昔からあったと思うのですが、あまりそれ単独で書かれている感じではないようです。
養成施設などで使用されている東洋医学関連の教科書でもあまり詳しく述べられてはいないようで、ざっくり書くと「痔は太陽膀胱経の病」と書かれているぐらいでしょうか。

それでは、あまりにも情報が少なすぎるので、ちょっと違う視点からアプローチしてみましょう。

東洋医学ではというか中医学でも同じようなことをすると思いますが、弁証論というのがあります。

弁証とは症状・現象を分析鑑別するという意味で、臨床現場で培ってきた経験と知識を集約し、それを分析し臨床で役に立つようにしたものということになります。

弁証には八綱弁証、臓腑弁証、六経弁証、三焦弁証、衛気営血弁証などがありますが臓腑弁証の中に痔漏についての記載があります。


●大腸熱証
口唇乾燥・大便秘結・肛門腫痛、湿熱がたまるとだいたいにおいて水様便となり腐臭を伴う、色は紫、脉数、舌苔は黄燥、小便短赤・肛門の内外が爛れてジクジクして長く治らず・臓毒、或は痔漏になる、血分に熱があると血絡を傷つけ血便が出る。という風な記載があります。大腸の熱による症状は口が渇いたり、便秘したり肛門が腫れぼったく痛んだりするのですが、湿熱を帯びるとまた状況が変わります。
湿熱は湿邪つまり湿気の影響などの影響から体内での湿気、水分の滞りがあって、熱を帯びた状態が大腸を侵すと便の性状にも大きな影響があり、水様便つまりは下痢になる訳です。熱を帯びた下痢をしていたりすると肛門がただれたりしてそれが痔漏になるということですね。

●大腸虚証
脱肛、婦人の場合は分娩の時に力を用いすぎて直腸が下垂する
こちらでは虚証なので、エネルギーが少ない状態ということになります。現代医学では脱肛は内痔核が肛門外へ脱出した状態ですが、東洋医学でもほぼ同義で考えて問題ないように思います。

他には、藤本蓮風氏の著書

 蔵府経絡学
http://www.nagomido.net/short/zoufukeiraku

 経穴解説
http://www.nagomido.net/short/keiketsu

の中にも記載があります。

東洋医学では肛門は魄門(はくもん)と言いますが、この「魄という字を使用した経穴(ツボ)」に「魄戸」という経穴があります。これは背部輸穴の「肺兪」の外方に位置する経穴で、「肺は魄をつかさどる」こともあり、五藏六府の関係から「肺兪」と「魄戸」は肺と大腸で表裏関係になるということになります。
また、肛門は腸の末端の出口ですから間に直腸を挟みますが、大腸の末端という風にも捕らえることができますし、経穴の漢字には意味があることを考えると大腸との関係は不快と言えます。魄門は大腸の末端であり魄の状態を示すところでもあるという訳です。

それから、経絡流注をみると太陽膀胱経の正経流注では肛門を通らないのですが、別絡は肛門まで伸びていて、太陽膀胱経上の経血にも反応点や治療点が現れるということになります。しかし、太陽膀胱経へのアプローチだけで治療できるのは軽度の場合で、ひどい場合はそのバックボーンにある肺や大腸の影響を考慮しないといけないということになります。

ということで、東洋医学では痔疾患のうち大腸の熱証では大腸に影響が出た時に発症する病で、太陰肺経、陽明大腸経、太陽膀胱経などに影響が出るということです。

次に脱肛ですが、慢性下痢などでも起こる場合がありますが、東洋医学では脾・腎気虚などが影響していることが考えられます。なので脱肛の場合は太陰脾経、陽明胃経、少陰腎経、太陽膀胱経などにも反応が現れるということになります。

次に治療の話に進みます。
大腸熱証では有名な経穴に孔最(こうさい)という経穴があります。これは太陰肺経上の経穴でゲキ穴という分類の経穴で、主に余分なエネルギーを取り去る、滞りを取るために使用します。

上で書いたように肺と大腸は表裏関係にあるので、肺経上の経穴からのアプローチが出来るということになります。


その他には承山穴や膀胱兪穴などもよく反応が出ている経穴になります。こちらは太陽膀胱経上の経穴ですが、承山穴はふくらはぎにある経穴ですが、体の部位でいうと肛門は後ろの下にあり、同様に承山穴も下肢の後ろの下にあるという位置関係で影響がでやすいと言えます。

膀胱兪穴は書いて字の如く膀胱を癒す経穴ですから太陽膀胱経に深く関与するということになります。

上記に挙げた経穴以外には会陰穴、関元穴、百会穴、大椎穴、気海兪穴、小腸兪穴、八リョウ穴、中膂兪兪、白環兪、会陽穴などなど教科書的にはいろいろな経穴が上げられています。
治療事態は鍼治療でいけますが、孔最穴には灸も古くから行なわれてきたようです。施灸の場合は10〜15壮ぐらいでしょうか。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
よろしければポチッとお願いします。
FC2ブログランキングへ  人気ブログランキングへ  にほんブログ村 健康ブログ 鍼灸(はり・きゅう)へ

posted by 鍼医Kまたはハリー at 00:49| Comment(0) | TrackBack(0) | メルマガバックナンバー