9月30日(金)の午前中は臨時休診して兵庫県鍼灸マッサージ師会の主催する夏期大学第4日目に出席してきました。
講師は明治国際医療大学(旧 明治鍼灸大学) 助教 田口 玲奈先生。
講題は「月経異常に対する鍼灸治療」
ということでした。
鍼灸院に月経異常を主訴として来院される方は少ないですが、別の症状の治療の中で「生理痛が無くなった」とか「生理が来るようになった」など一緒に治っていくことはよくあります。
昨今は女性の社会進出も以前に比べ進んでいることもあり、結婚、出産年齢が上昇していますし、年齢が上がることでのリスクが上昇したりすることもあります。
ホルモン分泌の関係でも妊娠による無月経期が無かったり少なかったりすることで継続的に女性ホルモンの影響を受けることでの弊害も報告されています。
また、不妊に悩む方も以前より多くなっているように感じますが、妊娠ということを考えた場合に月経の状態が安定していることは大切なことでもあります。
ということで、本日、聞いたお話についておさらいも兼ねて書いてみたいと思います。
ほとんどが特別、新しい情報というものではないので、知っている方は知っている内容ですが、再確認の意味も含めて読んでいただければと思います。
では、始めていきましょう!
まず、月経異常と言っても状態はさまざまです。そこで大事になてくるのが機能的月経異常なのかそれとも器質的月経異常かということです。
鍼灸治療の適応は大部分が機能的月経異常と言われています。重篤な症状については専門医の治療が必要となりますし、状態によっては鍼灸と専門医との併療の方がよいこともありますので、疾患の鑑別が大事です。
【1】月経異常の概要
(1)初潮や閉経の異常である早発月経、晩発月経、早期閉経など。
(2)月経周期の異常である無月経、希発月経、頻発月経など。
(3)月経量や持続期間の異常である過少月経、過多月経、過長月経など。
(4)排卵の異常である散発性または持続性無排卵性月経など。
(5)随伴症状を呈する月経前緊張症(月経前症候群)、月経困難症など。
という風に分類できます。次に主な月経異常の状態をみていきます。
【主な月経異常の特徴】
(1)無月経
それまであった月経が3ヶ月以上無い状態。生理的無月経と病的無月経があります。生理的無月経は妊娠中、出産後、閉経期にみられます。病的無月経には心因性無月経と視床下部、脳下垂体、卵巣、子宮のいずれかの機能的または器質的障害によっておこるものがあります。
(2)希発月経と頻発月経
希発月経は月経周期が39日以上、頻発月経は月経周期が24日以下のものを言います。
(3)月経前緊張症(月経前症候群:PMS)
月経の起こる5日〜7日前から情緒不安定や抑鬱などの精神症状、下肢を中心とした浮腫や腰痛、便通異常などの不定愁訴を呈する状態を言います。
(4)月経困難症
月経開始直前から月経期にかけて激しい陣痛様の下腹部痛や腰部や下肢に放散する痛みを呈する状態。原発性月経困難症と子宮内膜症や子宮筋腫などの疾患による続発性月経困難症に分類されます。
以上のことを含めて状態を鑑別すると次のようになります。
【鑑別のポイント】
(1)月経前、不定愁訴を訴える→月経前緊張症。(月経前症候群)
(2)月経開始直前から月経期に強い下腹痛→月経困難症。子宮内膜症や子宮筋腫などの器質的疾患が除外されれば原発性月経困難症。
(3)月経の持続期間が2日以内、月経量が以上に少ない→過少月経。月経の持続期間が8日以上、月経量が異常に多い→過多月経や過長月経。
(4)月経周期が24日以内→頻発月経。39日以上→希発月経。3ヶ月以上月経が無い→無月経。
(5)無月経、精神的ショック、急な環境の変化→心因性無月経。
という風になります。機能的な月経異常か器質的なものか鑑別し、必要に応じて専門医を紹介するなどの対処が必要です。
ここで、講演の中で月経前症候群(月経前緊張症)のところで、月経前不快気分障害という項目がありました。
月経前不快気分障害はあまり聞きなれない言葉という方も少なくないと思いますが、それはそのはずで日本ではまだ研究が進んでいないこともあり、診断基準がまだ、できていないので、認知があまり進んでいません。
なので、月経前不快気分障害について少し説明します。
月経前不快気分障害(Premenstrual Dysphoric Disorder:PMDD)は月経前症候群(Premenstrual Syndrome:PMS)のひどい状態と思っていただければよいと思います。
月経前症候群は月経の2週間ないし1週間位前からおこり、月経開始とともに消失する、周期性のある一連の身体的、および精神的症状を示す症候群を言いますが、特に精神的な症状が強い場合は注意が必要です。
日本での診断基準はまだありませんが、アメリカではすでに診断基準が作られていますので、そちらを参考に月経前不快気分障害が疑われるような場合は専門医との連携が必要と思われます。
さて、現代医学での鑑別は上記のようになりますが、東洋医学では月経異常についてどのように考えているかを説明します。
【東洋医学でみた月経異常】
腎気虚により任脈や衝脈を障害するもの。ストレスにより肝気が抑鬱し気滞やケツオや肝鬱化火をを生じて起こるもの。脾陽虚や出血により気血が虚して起こるもの。脾気虚から痰湿を生じ、任脈や衝脈の気血の流れをふさぐものなどがあります。
最も基本的なところとしては五臓の腎と任脈、衝脈の両経脈が重要となってきます。他にも五臓の肝や脾なども影響を与えるということになります。
月経については経血の状態がとても参考になりますが、実際に見せてもらう訳にもいきませんので、そこは問診によって聞くということになるのですが、通常、他の人と比べた経験はないと思うので、主観が影響してしまいますので、その辺りは考慮しないといけません。
経血に粘りがあるとか、色が薄いとか濃いとか、血塊が混ざっているとか、すぐに出欠が止まるとかだらだらと止まらないなどが参考になります。
では、次に状態別に基本的な治療を説明します。
【基本的な治療のポイント】
1.心因性無月経→肝気抑鬱や気血両虚に相当。
肝気抑鬱には百会、肩井、合谷、太衝。気血両虚には足三里、三陰交、太谿、腎兪、関元、気海、脾兪、中カンなど。
。卵巣を刺激する目的で次リョウ、中リョウ、胞肓など。腹部の関元、気血、大巨などに治療。
2.月経前緊張症(月経前症候群)及び月経困難症→気滞やオケツによるものに相当。
気滞の症状には百会、合谷、太衝、肝兪など。オケツには三陰交、血海、膈兪、左大巨など。
治療については三陰交がやはりよく使用されます。経絡では上にも書きましたが、肝頸、腎経、脾経や奇経八脈の任脈、衝脈の反応をよく診る必要があります。
講演の中で紹介されていた治験では全身的な治療と鍼通電両方がありましたが、私的にはツボがきちんと取れていれば鍼通電は必要ないかと思います。
また、治験では生理痛が出現しているまさにその時に治療をして症状が軽減していたり、継続して治療を行うことで、月経前緊張症が軽減していったり、月経周期が安定したといった報告もされていました。
月経期の症状の軽減だけでなく予防としても鍼灸は有効な治療と言えますので、月経が安定していない方や生理痛がひどい方などは試してみる価値はあると思います。
たかが生理痛と放置している方が多いのが現状と思いますので、大きな疾患が隠れていないかどうかということも大切ですし、生理痛などの月経困難症や月経前緊張症(月経前症候群)などで日常生活にも大きな損失となっているかもしれませんから。
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