2011年12月31日

現役 鍼灸師Kの「思うところを述べよ!?」 vol.210 2011年を振り返って

メルマガで配信した内容の一部を掲載します。


2011年は改めて言うまでもなく、多くの自然災害に見舞われた年であり、原発事故という人災のあった年でした。

多くの人命が失われ、未だに多くの行方不明者もあり、家族や住宅、職を失った方々の生活再建はまだまだ手付かずのところも多いと思います。

原発事故では眼に見えない放射性物質の影響がどれほどあるのか不安な日々を送るという状況が継続しています。

このような大災害に見舞われ、多くの方が自身でできることを可能な限り行っており、改めて人としての暖かさなどが再確認されたということもあります。
自身を振り返ってみると、まだまだ不十分でもっとできることがあるのではないかという反省もあります。時間の経過とともに記憶は薄れていきますし、日々の生活やその他、いろんなことがある中で、自身の中で風化してしまわないように、事ある毎に振り返り、歩いてきた道を確かめながら、前を向いていきたいと思います。

政治経済が低迷する中で、被災地の復興や原発問題の処理、今後の生活になかなか明るい兆しは見えてこないですが、それでも一歩一歩進んでいかなければなりません。できることしかできませんが、現状を踏まえた上で、新たなステージを模索していく必要があると思います。

2012年は明るい兆しの見えるような年となることを願います。

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2011年10月31日

現役 鍼灸師Kの「思うところを述べよ!?」 vol.209 無知は強し?

メルマガのバックナンバーをお届けします。


ここのところ、当院がプロデュースしている焼き菓子専門店の神戸やきがし なごみ堂はちょこちょこイベントに出店させていただいています。

イベントには多くのお店や個人が出店しているんですが、イベントの趣旨に外れていなければ、ほんとさまざまな業種が出店しています。

その中に、アロマテラピーやリフレクソロジーを行うリラクゼーションサロンが出店しているイベントがありました。

イベントですから、来場者に呼び込みなどを行っているところも多々あるのですが、そのリラクゼーション系の出店者の方がこんな呼びこみをしていたそうです。

「マッサージはいかがですか?」

「背中、腰のマッサージができます!」

「肩こりや腰痛のある方 マッサージはどうですか?」

そのような呼びこみを平然と行っている方が多数。

これはれっきとした違法行為です。

まず、マッサージという手技療法を行えるのはあん摩・マッサージ・指圧師または医師ということで、資格を持たないセラピストがそのような文言で手技を行うことはできません。

二つめは肩こりや腰痛などの疾患名を示して手技を行うことも宣伝活動とみなされればアウトです。

厳密に法律に照らし合わせれば違法行為を行っていることになりますし、罰則の対象となることもあります。

とはいえ、おそらく呼び込みをしていた人もリラクゼーション系の手技を行っている方もほとんどの方は違法行為を行っていたとしても、それが違法行為であるかどうかなどを知らない人がほとんどでしょう。

一般的にマッサージという言葉もあいまいな使われ方をしていますし、本当の有資格者のマッサージとリラクゼーション系のものとの区別ができる方も少ないというのが現状です。

しかしながら、違法行為を行っていることには違いはなく、本来は取り締まられなければならない行為でもあります。

法整備が後手後手になって、新しい手技などが海外から入ってきても、それに対応できていないことも原因のひとつですし、また、法を整備したためにその法の隙間を縫うように既成事実化しているという面もあります。

今や一大産業となっているエステも国内で最初にフェイシャルを行いだしたのは床屋さんだったそうですが、その手技はマッサージの手技の一部であり、無資格者が行うことは違法行為ということで、議論になり、結果的に医療行為ではなく美容であるからあん摩・マッサージ・指圧しの資格の必要はないという見解になったそうです。

それが、今やフェイシャルからボディー、ヘッドスパなど領域を広げ、すべて医療ではなく美容ということで法律の規制を受けずに発展してきました。

そんなエステ業界も段々と飽和状態となりつつあり、昨今はメディカルエステというようなカテゴリーも導入してきています。

本来のエステは医療の一環であって、海外の国際ライセンスを取得している方にとっては当然のことだと思います。そして、国内でも医療分野に進出しようとしている訳です。

国内に輸入された当時は医療ではないからという理由だったのに、今は医療分野でも活躍の場があると変化してきているのです。大きな矛盾をはらんでいるんじゃないでしょうか?

エステ業界は大きな産業となっていますし、いまさら従事している方の職を奪うことは現実的ではありません。そうなると、資格制度をきちんと整備する必要があるでしょうし、もしも医療分野に進出するということであれば、医療系の資格取得に必要な基礎医学をきちんと学習する必要があるでしょう。

まぁ、それも資格ビジネスになるだけで、技術のない人を増産してしまう可能性をはらんでいますから一概に良いとも言えないのですが…

話は戻りますが、イベントに出店していたリラクゼーション系のお店はリフレクソロジーも行っていたようですが、屋外のイベント会場で、足湯なども完備はされていません。

そのような状況で素手でオイルマッサージを不特定多数の方に行っていましたが、正直言って、かなり不衛生です。蒸しタオルなどを用意してきれいにふき取れば雑菌も減少しますが、そのような準備もしていない様子だったようです。

セラピストの手を介して菌が拡散していてもおかしくない状況です。

私的にはそのような衛生面をきちんとできないような方が「肩こりや腰痛に効果があります」とか、「足にはツボがたくさんあって…」などと言っていることに驚愕してしまいます。

知らないということはある意味、とても強いことで、大きなリスクを含有しています。「知らぬが仏」という故事もありますが、こと身体に関する何らかの影響が有る場合には当てはまらないことだと思いますし、多くの方が現実や法律などにきちんと向き合って正しい知識を持つことが必要だと思います。

法律や衛生面なども知識があればその行為がどういうことなのか考えることもできますし、行動を変えることもできます。しかし、無知では考えるという思考にすら辿り付けないでしょう。

法律がすべて正しいとは思っていませんし、時流とともに合わなくなることもあります。その場合は法を適切な形に変化していけば良いことで、悪影響を減らすことに努める必要があります。

「法は破るためにある」なんてことを言う人もいますが、法治国家において、それはやってはいけないことで法の改正などはあっても破っていいということではないと思いますし、法の隙間を縫う行為も決して良いとは思いません。

時の流れるスピードが速く、現代社会は何事においてもごて後手になりがちですが、少なくとも現行法に抵触するような行為や身体に影響がある行為についてはきちんとした知識を持って対処したいものです。


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2011年10月01日

月経異常に対する鍼灸治療

9月30日(金)の午前中は臨時休診して兵庫県鍼灸マッサージ師会の主催する夏期大学第4日目に出席してきました。

講師は明治国際医療大学(旧 明治鍼灸大学) 助教 田口 玲奈先生。
講題は「月経異常に対する鍼灸治療」
ということでした。

鍼灸院に月経異常を主訴として来院される方は少ないですが、別の症状の治療の中で「生理痛が無くなった」とか「生理が来るようになった」など一緒に治っていくことはよくあります。

昨今は女性の社会進出も以前に比べ進んでいることもあり、結婚、出産年齢が上昇していますし、年齢が上がることでのリスクが上昇したりすることもあります。

ホルモン分泌の関係でも妊娠による無月経期が無かったり少なかったりすることで継続的に女性ホルモンの影響を受けることでの弊害も報告されています。
また、不妊に悩む方も以前より多くなっているように感じますが、妊娠ということを考えた場合に月経の状態が安定していることは大切なことでもあります。

ということで、本日、聞いたお話についておさらいも兼ねて書いてみたいと思います。

ほとんどが特別、新しい情報というものではないので、知っている方は知っている内容ですが、再確認の意味も含めて読んでいただければと思います。

では、始めていきましょう!
まず、月経異常と言っても状態はさまざまです。そこで大事になてくるのが機能的月経異常なのかそれとも器質的月経異常かということです。

鍼灸治療の適応は大部分が機能的月経異常と言われています。重篤な症状については専門医の治療が必要となりますし、状態によっては鍼灸と専門医との併療の方がよいこともありますので、疾患の鑑別が大事です。


【1】月経異常の概要
(1)初潮や閉経の異常である早発月経、晩発月経、早期閉経など。
(2)月経周期の異常である無月経、希発月経、頻発月経など。
(3)月経量や持続期間の異常である過少月経、過多月経、過長月経など。
(4)排卵の異常である散発性または持続性無排卵性月経など。
(5)随伴症状を呈する月経前緊張症(月経前症候群)、月経困難症など。

という風に分類できます。次に主な月経異常の状態をみていきます。
【主な月経異常の特徴】
(1)無月経
それまであった月経が3ヶ月以上無い状態。生理的無月経と病的無月経があります。生理的無月経は妊娠中、出産後、閉経期にみられます。病的無月経には心因性無月経と視床下部、脳下垂体、卵巣、子宮のいずれかの機能的または器質的障害によっておこるものがあります。

(2)希発月経と頻発月経
希発月経は月経周期が39日以上、頻発月経は月経周期が24日以下のものを言います。

(3)月経前緊張症(月経前症候群:PMS)
月経の起こる5日〜7日前から情緒不安定や抑鬱などの精神症状、下肢を中心とした浮腫や腰痛、便通異常などの不定愁訴を呈する状態を言います。

(4)月経困難症
月経開始直前から月経期にかけて激しい陣痛様の下腹部痛や腰部や下肢に放散する痛みを呈する状態。原発性月経困難症と子宮内膜症や子宮筋腫などの疾患による続発性月経困難症に分類されます。

以上のことを含めて状態を鑑別すると次のようになります。

【鑑別のポイント】
(1)月経前、不定愁訴を訴える→月経前緊張症。(月経前症候群)

(2)月経開始直前から月経期に強い下腹痛→月経困難症。子宮内膜症や子宮筋腫などの器質的疾患が除外されれば原発性月経困難症。

(3)月経の持続期間が2日以内、月経量が以上に少ない→過少月経。月経の持続期間が8日以上、月経量が異常に多い→過多月経や過長月経。

(4)月経周期が24日以内→頻発月経。39日以上→希発月経。3ヶ月以上月経が無い→無月経。

(5)無月経、精神的ショック、急な環境の変化→心因性無月経。

という風になります。機能的な月経異常か器質的なものか鑑別し、必要に応じて専門医を紹介するなどの対処が必要です。

ここで、講演の中で月経前症候群(月経前緊張症)のところで、月経前不快気分障害という項目がありました。

月経前不快気分障害はあまり聞きなれない言葉という方も少なくないと思いますが、それはそのはずで日本ではまだ研究が進んでいないこともあり、診断基準がまだ、できていないので、認知があまり進んでいません。

なので、月経前不快気分障害について少し説明します。

月経前不快気分障害(Premenstrual Dysphoric Disorder:PMDD)は月経前症候群(Premenstrual Syndrome:PMS)のひどい状態と思っていただければよいと思います。

月経前症候群は月経の2週間ないし1週間位前からおこり、月経開始とともに消失する、周期性のある一連の身体的、および精神的症状を示す症候群を言いますが、特に精神的な症状が強い場合は注意が必要です。

日本での診断基準はまだありませんが、アメリカではすでに診断基準が作られていますので、そちらを参考に月経前不快気分障害が疑われるような場合は専門医との連携が必要と思われます。


さて、現代医学での鑑別は上記のようになりますが、東洋医学では月経異常についてどのように考えているかを説明します。


【東洋医学でみた月経異常】
腎気虚により任脈や衝脈を障害するもの。ストレスにより肝気が抑鬱し気滞やケツオや肝鬱化火をを生じて起こるもの。脾陽虚や出血により気血が虚して起こるもの。脾気虚から痰湿を生じ、任脈や衝脈の気血の流れをふさぐものなどがあります。

最も基本的なところとしては五臓の腎と任脈、衝脈の両経脈が重要となってきます。他にも五臓の肝や脾なども影響を与えるということになります。

月経については経血の状態がとても参考になりますが、実際に見せてもらう訳にもいきませんので、そこは問診によって聞くということになるのですが、通常、他の人と比べた経験はないと思うので、主観が影響してしまいますので、その辺りは考慮しないといけません。

経血に粘りがあるとか、色が薄いとか濃いとか、血塊が混ざっているとか、すぐに出欠が止まるとかだらだらと止まらないなどが参考になります。

では、次に状態別に基本的な治療を説明します。


【基本的な治療のポイント】

1.心因性無月経→肝気抑鬱や気血両虚に相当。

肝気抑鬱には百会、肩井、合谷、太衝。気血両虚には足三里、三陰交、太谿、腎兪、関元、気海、脾兪、中カンなど。
。卵巣を刺激する目的で次リョウ、中リョウ、胞肓など。腹部の関元、気血、大巨などに治療。

2.月経前緊張症(月経前症候群)及び月経困難症→気滞やオケツによるものに相当。

気滞の症状には百会、合谷、太衝、肝兪など。オケツには三陰交、血海、膈兪、左大巨など。

治療については三陰交がやはりよく使用されます。経絡では上にも書きましたが、肝頸、腎経、脾経や奇経八脈の任脈、衝脈の反応をよく診る必要があります。

講演の中で紹介されていた治験では全身的な治療と鍼通電両方がありましたが、私的にはツボがきちんと取れていれば鍼通電は必要ないかと思います。

また、治験では生理痛が出現しているまさにその時に治療をして症状が軽減していたり、継続して治療を行うことで、月経前緊張症が軽減していったり、月経周期が安定したといった報告もされていました。

月経期の症状の軽減だけでなく予防としても鍼灸は有効な治療と言えますので、月経が安定していない方や生理痛がひどい方などは試してみる価値はあると思います。

たかが生理痛と放置している方が多いのが現状と思いますので、大きな疾患が隠れていないかどうかということも大切ですし、生理痛などの月経困難症や月経前緊張症(月経前症候群)などで日常生活にも大きな損失となっているかもしれませんから。


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