2017年08月05日

兵庫県鍼灸マッサージ師会主催夏期大学講座第2日目 「スポーツ鍼灸の基礎と臨床のコツ2」「皮膚疾患にたいする鍼灸治療-アトピー性皮膚炎に対する鍼灸治療」 その2

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前回の続きです。
午後は明治国際医療大学 鍼灸学部 特任教授の江川 雅人 先生による「皮膚疾患に対する鍼灸治療 -アトピー性皮膚炎に対する鍼灸治療-」との演題で講義と実技を行なっていただきました。

アトピー性皮膚炎は現代医学ではステロイド外用薬を用いた治療が標準ですが、ステロイド外用薬については副作用リスクもありますし、医師の指導の下にステロイド治療を行なってもかゆみや皮膚症状をコントロールできない例も少なくありません。

鍼灸院を受診される患者さんは「ステロイドの使用をやめたい」「対症療法ではなく根治治療をしたい」と言った思いで来院されることが多いですし、また、鍼灸治療によって絶大な効果を発揮することもあります。

さて、アトピー性皮膚炎の定義ですが、現在は「増悪と緩解を繰り返す掻痒を伴う湿疹を主症状とし、患者の多くはアトピー素因を有する」と定義されています。

つまりはかゆみがあって、湿疹が継続して出現していればアトピー性皮膚炎と診断されるということです。また、「多くはアトピー素因を有する」ということで、アトピー素因、つまりはアレルギー体質の要因だけではないということです。

アトピー性皮膚炎の病態としては「アレルギー性機序」と「非アレルギー性機序」に大別されます。アレルギー性機序はT型(アトピー型)とW型(接触型)に分けられ、T型はIgE抗体が関与するもので、W型はTリンパ球が関係するものということになっています。

非アレルギー方は皮膚バリア機能の障害、光線過敏、心理的要因としての嗜癖的掻破行動があげられます。

そのような化学的、物理的な刺激によって最終的に皮膚に炎症を引き起こしてしまうということです。

中医学的には生まれつき持った脾胃の虚弱や腎陰虚に高カロリー食や環境や精神衛生上の問題などの種々のストレスなどが加わることによって、皮膚の炎症症状として現れるという風に考えます(かなりざっくり書いています)。
では、治療はどのように行なうのかというと…明治国際医療大学では以下の4タイプに分類し治療を進めていくそうです。
「風熱証」「風湿証」「風寒証」「気血両虚証」に分類し、各々、清熱涼血、去風化湿、去風散寒、気血双補を治則として配穴と刺激方法を定め治療を進めます。

それぞれのタイプをざっくり説明すると…
・風熱証タイプは皮膚が発赤し、熱を持っているタイプ。五蔵の肝との関わりが強い。
・風湿証タイプは皮膚がジュクジュクし、掻くと滲出液がすぐに出てくるタイプ。五蔵の脾との関わりが強い。
・風寒証タイプは皮膚が黒ずんで長期に罹患しているタイプ。五蔵の腎との関わりが強い。
・気血両虚タイプは皮膚が乾燥して粉をふくようなタイプ。
という感じになります。病態は上記の分類が混在しているケースもありますからその場合は選穴も混在するようです。

また、種々のストレスなどでも症状が悪化する場合がありますし、皮膚症状だけでなく肩こりや便秘、イライラするなどの随伴症状を伴っており、その随伴症状を取り除くことも皮膚症状の状態に深く関与してきます。

つまり、主たる症状は皮膚症状ですが、身体に現れている様々な症状、歪を取り除くことが重要ということになります。となると、ステロイド外用薬を用いた治療だけでは片手落ちになってしまうケースが少なくないということになります。

特に長期間症状を持っている難治性症状となっている方は全身的な治療を行ない、身体を元気にしていく必要があるということです。

そして、身体のバランスが整ってくるとアレルギー素因を持っている方でもその感受性が徐々に低下し、IgE抗体の値も低下してくるということになります。

当院でも難治性のアトピー性皮膚炎の患者さんを診させていただいていますが、環境変化やストレスなどで一進一退することはありますが、身体の状態を整え、少しずつですが、改善に向かっています。

皮膚症状は皮膚に現れた現象であって、内臓やメンタルなど種々の状態を反映した結果です。ということは全身の調子、バランスを整え、体調が改善し安定してくればおのずと皮膚症状も消失していくということです。

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2017年08月04日

兵庫県鍼灸マッサージ師会主催夏期大学講座第2日目 「スポーツ鍼灸の基礎と臨床のコツ2」「皮膚疾患にたいする鍼灸治療-アトピー性皮膚炎に対する鍼灸治療」 その1

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本日は兵庫県鍼灸マッサージ師会主催夏期大学講座第2日目に参加してきました。
外は猛暑、室内は冷房で徐々に身体が冷えてくるしで、この時期は温度差が身に堪えます。

さて、本日の午前はこの3月まで明治国際医療大学で教団に立っておられたミモザ鍼灸サロンの片山 憲史 先生による「スポーツ鍼灸の基礎と臨床のコツ2(講義・実技)」との演題で講義と実技を。午後は明治国際医療大学 鍼灸学部 特任教授の江川 雅人 先生による「皮膚疾患に対する鍼灸治療 -アトピー性皮膚炎に対する鍼灸治療-」との演題で講義と実技を行なっていただきました。

片山先生は定年を待たず大学を退職され、会員された訳ですが、会員されたサロンの紹介と同時にどのような思いでサロンを作っていったのかというお話もいただきました。興味深かったのは個人店ではおそらく国内発という「酸素ルーム」が設置されていることです。「酸素カプセル」を設置しているところはあるかもしれませんが、酸素カプセルの場合は閉所恐怖証の方やケガや病気などでお体が不自由な方は使用しにくいまたは使用できないというデメリットがありますが、「酸素ルーム」の場合はスペースが広くなるためそのようなデメリットがないという点がメリット。さらに設置されている「酸素ルーム」は2way方式で高圧と低圧が切り替えられる代物ということで、高圧にすれば疲労回復や治癒の促進になりますし、低圧にすれば地上にいながら高地トレーニングができるということで、スポーツ選手にとっては治療、コンディショニングからパフォーマンス向上のための施設としても利用できるということです。

また「院」という形態ではなくあえて「サロン」にした理由に上記のようなスポーツ心休を主とした治療とコンディショニング、パフォーマンス向上の他に美容鍼灸やアロマテラピーを組み込んだメニューを行なって、現代社会のニーズに答えられるような施設を目的に開設されたということでした。

多様化した現代においては医療関連施設であったとしても時代の流れに沿うような形態変化をとげないと淘汰されてしまうのかもしれません。
あと、個人的には「酸素ルーム」の設置費用がどのぐらいだったのか気になります。まぁ、当院は「酸素ルーム」を設置するスペースは取れそうにないので、設置予定はありませんが…
長くなってしまったので、午後の講座については次回書きたいと思います。


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2017年07月23日

兵庫県鍼灸マッサージ師会主催夏期大学講座第1日目「股関節・膝関節・足関節の最新手術療法の実際」「慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)の鍼灸治療」

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本日は平成29年度兵庫県鍼灸マッサージ師会主催の夏期大学講座第1日目に出席してきました。
午前は「頸椎部疾患・下肢(股関節、膝関節、足関節)に対する手術療法の実際」との演題で大久保病院 明石スポーツ・関節外科センターの大西 康央 医師による講演を受講しました。

午後は「呼吸器疾患に対する鍼灸治療-主として慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する鍼灸治療-」との演題で明治国際医療大学鍼灸学部 明治東洋医学院専門学校教員養成学科の矢野 忠 先生の講演を受講しました。

午前の大西先生の講演では頸椎に起因する疾患の鑑別などの復習と再確認となりました。下肢の関節については大西先生が専門とされている関節鏡を用いた最新の手術療法について学習することができました。特に興味深かったのは膝関節の疾患で、半月板損傷がある場合、従来は断裂した半月板を除去し、一時的には症状が改善していても後に再発し、最終的に人工関節に置換していたような症例でも、半月板を縫合、再建し、骨切り術を行い自己骨や人工骨で重心を正しくかかるように膝関節を再建することでスポーツや正座ができる状態に改善させることが可能になっているということでした。しかも、それを関節鏡で行なうというのですから患者の負担も極めて少なくできるということでした。この術式自体は新しい術式ではないとのことでしたが、骨を固定するプレートの開発が進み、見直されている術式なんだそうです。同時にO脚などの変形を矯正するう手術を加えることで予後が良くなっているとのことです。もちろん、このような手術が不適当なケースもあるとは思いますが、手術適用で、スポーツを今後も行いたいという方には朗報だと思います。あとリハビリが重要なのは言うまでもありません。

午後の講演では超高齢化社会の影響もあり、近年増加の一途を辿っている慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)についての病態把握と鍼灸治療を行なうことでの研究結果を学習しました。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、「喫煙や有毒なガスの持続的な吸入が原因で発症する。気管支の炎症に加えて不可逆的な肺胞破壊から、持続的な咳嗽、喀痰、労作時の呼吸困難を主症状とする疾患である。」と定義されています。

軽症では自覚症状が無い場合もありますが、病態が進展し重症化すると安静時でも酸素ボンベを必要となることもあります。

喫煙の場合は1日の本数などにもよりますが、20年以上の期間を経て発症すると言われており、また高齢化することで呼吸機能が減弱し、日常動作(ADL)に著しく悪影響をもたらす疾患です。

COPDだけでなく生活習慣病というものは「一旦悪くなってしまうと基本的には元の状態には戻ることはない」ということになるのですが、鍼灸治療を行なうことで、状態が改善しADLが改善することでQOLが向上するということはあります。

日本においては「投薬する群」「投薬をしない群」「鍼灸を行なう群」「鍼灸と投薬を行なう群」というような比較検討する研究が難しいのが実情で、鍼灸だけの治療効果を判定することは難しいということですが、COPDの場合、投薬を行なっていても徐々に症状が悪化していく経過を辿るところが、鍼灸を加えた場合には症状が改善することは研究結果でも明らかということでした。

鍼灸治療を行なうことで抹消では呼吸補助筋の過緊張が和らぐことで胸膈の可動域が改善すること、筋疲労が改善することで呼吸補助筋力の向上が考えられるとのことでした。また、中枢においては呼吸困難により賦活されている部分が抑制されることや、βエンドルフィンが放出されることが呼吸機能の改善に繋がっているのではないかとのことです。

一旦、正常な機能を失ってしまった状態であっても、正常な状態には戻れないまでも状態が改善することでQOLを向上させていくことは可能ということで、現代医療に加えて、東洋医学を併用して行なうことが重要な時代になっているのだと思います。


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